【書評】ハピネス(桐野夏生)-都会のママ友つきあいをから見える女性の世界を描いた作品

tawaman

桐野夏生さんのハピネスを読みました。桐野夏生さんの本にしては珍しく、どこにでもありそうなママ友づきあいがメインテーマ。軽く一気に読めました。

おススメ度★★★☆☆

三十三歳の岩見有紗は、東京の湾岸地区にそびえ立つタワーマンションに、三歳二カ月の娘と暮らしている。結婚前からの憧れのタワマンだ。
おしゃれなママたちのグループにも入った。
そのリーダー的な存在は、才色兼備の元キャビンアテンダントで、夫は一流出版社に勤める いぶママ。
他に、同じく一流会社に勤める夫を持つ真恋ママ、芽玖ママ。その三人とも分譲の部屋。しかし有紗は賃貸。
そしてもう一人、駅前の普通のマンションに住む美雨ママ。彼女は垢抜けない格好をしているが、顔やスタイルがいいのでいぶママに気に入られたようだ。
ある日の集まりの後、有紗は美雨ママに飲みに行こうと誘われる。有紗はほかのママたちのことが気になるが、美雨ママは、あっちはあっちで遊んでいる、自分たちはただの公園要員だと言われる。
有紗は、みんなには夫は海外勤務と話しているが、隠していることがいくつもあった。

ママ友のヒエラルキーってすごい。めんどくさそう!というのが最初の感想でした。

タワーマンション、略してタワマン。同じタワマンでも良い方角の棟(値段が高い)の方が格上で、その中でもさらに高層階の方が格上。

主人公の有紗は安い方の棟に住んでてしかも賃貸組。といっても家賃が23万円というからタワマン住民以外から見れば立派なセレブです。

なので普通のマンションに住んでいる美雨ママをちょっと見下している感もあるのですが、分譲タワマン組との疎外感を感じているというのは一緒。この二人は少しずつ仲良くなっていきます。

リーダー的存在のいぶママはこのヒエラルキーでいうと一番上。

仲間の中で最も良い部屋に住んでいて出身大学も格上の慶応です。

毎日の集まりはいぶママが仕切っていて「今日はどこどこで遊ぼう」と指令が来て他のメンバーは何も考えずに集まっているという図式。

表面的には仲良くしているけどママ友たちの関心は幼稚園のお受験。

良い幼稚園に入らないと良い小学校に入れないのでみんな必死!

だけど落ちた時にかっこ悪いからか、合格が決まるまでどこを受けるか秘密にしているのは暗黙の了解。

ここで良い幼稚園に合格したら、またママ友ヒエラルキーの順序が上がるのでしょう。

私には子供がいないので他人事のようにさらっと読めたけど、ママ友関係で色々ある人が読むと複雑な心境になるかもしれません。

他のママ友にはちゃんと旦那さんがいるけれど、有紗は子供の花奈と二人暮らしです。

夫からは離婚したいと言われてるけども納得できず、家賃と生活費を振り込んでもらって表面上は優雅な「憧れのタワマン生活」を楽しんでます。

有紗は鈍感で弱そうに見えて実はしたたか。客観的に見たらもう夫婦関係は破たんしてるのだからさっさと離婚して子供を保育園に預けて働けば良いのに、と思いますが「タワマン」専業主婦の地位を捨てられない感じ。周りのママ友も保育園なんてありえないという雰囲気だし。

ママ友関係やお受験のいやらしさを鋭く描けるのは林真理子さん、というイメージでしたが桐野夏生さんも一人一人の心理をじっくり書いていてなかなか面白かったです。

桐野夏生さんがどうしてこんな小説を書いたの?と疑問でしたがこの小説は雑誌Veryに連載されていたようです。Very奥様って「子供が幼稚園に行ってる間にママ達はゆっくりお茶」みたいな世界感だから、こういう小説が受け入れられるのでしょう。